年をとるにつれて我々の時間の感じ方というのは比例的に速くなっていきます。この原因については今尚不明確であり、研究が進められています。エルンスト・ユンガー(1954)はこの現象を「砂時計」と表現している。砂時計はひっくり返される度に、使える時間の貯蔵庫は元通りになる。人は手を伸ばすだけでいい。だが、その新たな貯蔵を何度もひっくり返して空けようとも、時はますます速くすぎていく。砂時計の中では、砂の粒がほとんど摩擦もなく互いにさらさらとこすれ合い、一方の球からもう一方の球へ流れ、その間ずっと砂時計の首の部分を磨いて、その首をさらに広げていく。砂時計が古ければ古いほど、首は広いゆえ砂は速く流れる。誰も気づくことなく、その砂時計が測る”時間”はどんどん短くなっていく。

ここには1つの隠喩が隠されている。「砂時計と同じように、人にとっても、毎年毎年がますます速く過ぎ去っていく」のだ。

ではどうして我々はこの「砂時計」のごとく年をとるにつれて時間が経つのを速く感じるのだろうか?この原因とその解決法を心理学的に説明していこうと思う。

時間の加速に関連する3つのメカニズム

時間と記憶に関する研究では、過ぎていく年々の加速に関連しているものとして以下の3つのメカニズムが確認されている。

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1. 望遠鏡効果

2. レミニセンス効果

3. 生理時計

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この内色付けした「レミニセンス効果」と「生理時計」のメカニズムが有力とされているので、この2つのメカニズムについて説明をしていこうと思う。

レミニセンス効果

まず前提知識から。フランス人医師テオデュル・リボーの『記憶の病』で述べられているように、記憶に日付を付けようとする人は誰でも「標識」、つまり日付がよく知られている出来事を利用する。標識は日々の出来事、家族の重要な行事、職業上の行為などから成る。リボー曰く、「個人の生活が変化に富んでいればいるほど、標識の数も多くなる」ようだ。

シャムは、どのくらい前に起きたか、何か別のものの前に起こったのか後に起こったのか、また場合によっては正確な日付がいつだったかなどを決定する標識を時間標識」と名付けた。例えば「私が初めて・・・した時」や「初めて・・・し始めた時」などのような標識である(この表現に馴染めない方やわからない方は「経験」と解釈してもらっても構わない)。

レミニセンス効果の説明ではこの「時間標識」という概念を用いて説明させてもらおう。

 

レミニセンス効果は聞いたことがある人も多いのではないだろうか?主に書籍やネットの情報に載せられている定義は、「記銘(情報のインプット)した直後より、一定時間経ってからの方がよく記憶を想起できること」である。

しかしこの定義は主に教育(教育心理学)の分野で使われるような定義であり、本記事における時間と記憶に関するメカニズムとしてのレミニセンス効果は、臨床心理学の分野で使われる「過去の個人的に経験したことを思い出すこと(Webster &Haight, 2002) という定義で説明させてもらう。

ではどうしてレミニセンス効果が時間の加速に影響を与えるのか。

シャムによれば、レミニセンス効果、すなわち年齢の高い人ほど20代の頃の出来事を比較的楽に思い出せるのは、利用できる時間標識がその期間に非常に多いことの結果である。つまり時間標識の数と記憶量(思い出)の多さとの間にはおそらく正の相関関係があるはずである。

シャムは、この理論と、年をとるにつれて人生は加速するという経験を関連づけたわけではないが、両者は実は因果関係で結ばれている。たくさんの思い出の詰まった期間は、振り返って見たときに時間標識が多いので伸びるだろうし、思い出がほとんどない同じ長さの期間より長く続いていたように思われる。

なぜなら人は頭の中で、「ぎっしり詰まった」記憶と比較する傾向があるからだ。誰もが斬新な経験が多かった若い頃の自分を比較対象として思い出すのだ。

すると、「若い頃より時間標識のない “その時”」 と、「経験豊富(時間標識が多い)な “若い頃”」 では、振り返って見た時の時間の長さは、明らかに “若い頃” の方が長く感じてしまうのだ。

その結果、若い頃と比べて今の方が、時間が経つのを速く感じてしまうというわけだ。

鯔のつまり、時間標識(経験)が少ないことが時間が経つのを速く感させてしまうと考えられる。

 

生理時計

生理時計とは、体内時計とも言われ、吸息、血圧、ホルモン放出、細胞分裂、睡眠、新陳代謝、体温など、それぞれ固有の周期を持ち、我々の生活にリズムと流れをもたらすものである。

ではこの生理時計が時間の加速にどうして影響を与えるのか。ここである実験を紹介する。以下はアメリカの神経学者マンガンの、「3つの年齢グループ(19~24歳 / 45~50歳 / 60~70歳)に、1秒ずつ数えながら3分間測ってもらった時の、グループ間の時間差の検証」である。

[aside type=”boader”]マンガンの実験

(1)

3つの年齢グループ(19~24歳 / 45~50歳 / 60~70歳)に、1秒ずつ数えながら3分間測ってもらった。若年グループ(19~24歳)は極めて正確に3分を数えた。平均して誤差は3秒程度。

中年グループ(45~50歳)は16秒長めに答えた

高齢者グループ(60~70歳)はなんと40秒長めに答えた。

 

(2)

再び異なる被験者で、今度は ”仕分け作業をしながら” 3分を数えてもらった。すると、

若年グループでは46秒、中年グループでは63秒、高齢者グループでは106秒長めに答えた。

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この実験で明らかになったのは、

①高齢になるにつれ、すぎていく時間感覚を過大評価する

②何か作業をしている時、年齢に関わらず時間がより速く過ぎる

の2点だ。

我々は年を重ねるごとに我々は時間を測る能力が落ち込む。その結果主観的に測っている時間(生理時間)と、現実の時間にズレが生じるのだ。このマンガンの実験でわかるように、主観的に測っている1秒の間隔は、現実の時間の1秒の間隔よりも長いのだ。

皆さんこんなセリフ、1度は吐いたことはあるでしょう。

「あれ、もうこんな時間」

このセリフの意味することはマンガンの実験の通り、我々が主観的に測っている時間(生理時間)と現実の時間にズレがあるということです。そしてこのズレは、年を重ねるごとに大きくなり、また何か作業をしているときはそのズレはより大きくなります。

 

時間が経つのを速く感じさせないためには?

上記でレミニセンス効果と生理時計のメカニズムについて説明をしました。

その2つのメカニズムからわかった「時間が経つのを速く感じる原因」であると考えられるのは以下の3点である。

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①若い頃と比較して、時間標識(経験)が少ない

②年を重ねるごとに、時間感覚を過大評価してしまう

③何か作業している

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このうち②と③は生物学的要因なため、解決となると困難です。

僕らが今すぐにでも対処できるのはです。

解決法は明々白々。時間標識(経験)を増やせばよい!

ではどんな経験を増やせばよいのか?無論過去と同じような経験をしてもそれは繰り返しであるため標識とはなりません。

つまり何か斬新で奇抜な経験をすることが、時間の加速を抑制してくれます。

例えば、海外旅行何か新しい挑戦、といったところでしょうか?

未知な経験で満たしてあげることが重要です。

 

青春は長く、老年は短い

子供の頃の日々はとても長かったのに、年をとると時間は驚くほど速くすぎていきます。我々は無意識に生理時計を基準として、時計の時刻を読み取るものです。

そして現実の時間は一定の速度で谷間を流れる川のように過ぎていく…

人生の朝のうちは、人はまだその川よりも速く、川沿いを颯爽と走っていく。正午ごろになると、スピードはいくらか落ち、川と同じ速度を保つ。夜に近づくと彼は疲れ、川の方が速く流れるので、彼は遅れていく。ついに彼は立ち止まり、川縁で横たわるようになるが、川はそれまでずっと流れてきたのと同じコースを、何事もなかったように、変わらぬ速度で流れ続けている。

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